「グレの歌」の原典
原作はデンマーク語ですが、シェーンベルクはドイツ語訳を読んで作曲しました。
1897年発行のドイツ語訳「J. P. ヤコブセン詩集」(ロベルト・フランツ・アーノルト訳)
ところが、訳者のアーノルトは2年後に「ヤコブセン全集第1巻」(1899)で訳を改めたため、シェーンベルクの採用したものとは食い違いが生じている、ということです。
原作を日本語で読むには
角川書店「ここに薔薇あらば」山室静訳(昭和28年)、岩波文庫「ここに薔薇ありせば」矢崎源九郎訳(昭和28年)、青娥書房「ヤコブセン全集」山室静訳(昭和50年)などがあります。
これらの本は入手困難ですが、ネット上には鷺澤伸介さんという方が、デンマーク語原書から直接、訳出したものがあります(最終改訂2011.2.6)。
ヤコブセン(ヤコプスン)-サボテンの花ひらく日本語訳
ヤコブセン(ヤコプスン)の「サボテンの花ひらく」をデンマーク語原典から日本語訳しました。
改訂前のドイツ語訳から採ったシェーンベルクの歌詞と少なからず違いがあります。
訳注には、ヴァルデマ1世、4世にまつわる物語もあって、非常におもしろい読み物となっています。
圧倒的な結末の意味
興味深いのは、訳者の鷲澤さんが「シェーンベルクがこの節をどうとらえていたかはともかくとして、よく言われているような『女性による救済』とか『太陽と自然による浄化』とかいった救いの暗示を、この節の中に読み取るのは無理だろう。」と書かれていることです。
確かに、改めてCDや公演プログラム冊子にある歌詞対訳を読むと「女性による救済」の手掛かりとなる直接的な言い回しが見当たらないことに気づきます。
ただ、ここに付けられた音楽の圧倒的な結末を耳にすると、「シェーンベルクがこの節をどうとらえていたかは」明らかではないでしょうか。